2020-06-12

スリランカの自然保護区サファリ②


スリランカの主要な自然保護区の紹介2回目です。前回はシンハラジャ森林保護区、ホートン・プレインズ国立公園、ヤーラ国立公園の3つをご紹介しましたが、続いて4つの国立公園をご紹介します。



1回 ★前回の記事はこちら
1.       世界遺産の森:シンハラジャ森林保護区
2.       ワールズ・エンドを訪ねる:ホートン・プレインズ国立公園
3.       レオパードの聖地:ヤーラ国立公園


2
4.       スリランカ最大の国立公園:ウィルパットゥ国立公園
5.       スリランカ初のラムサール条約登録湿地:ブンダラ国立公園
6.       ゾウの野生復帰を目指す:ウダ・ワラウェ国立公園
7.       「エレファント・ギャザリング」の地:ミンネリヤ国立公園

3回(次回投稿)
8.       ホエールウォッチングサイト:ミリッサとトリンコマリー


4.スリランカ最大の国立公園:ウィルパットゥ国立公園


ウィルパットゥは面積1316㎢を誇るスリランカ最大の国立公園。「ウィル」は「自然の水」を表し、池、湖、湿地など無数の水場に恵まれています。

スリランカではヤーラ国立公園がレオパード観察で有名ですが、ここウィルパットゥもレオパードの生息数が多いことで知られます。そのほかにもナマケグマや水牛、サンバーなど31種の哺乳類が生息しています。また、北西部海岸に面しているため海辺の野鳥も観察できるのが特徴です。

道路上に現れたレオパード


スリランカの国鳥:セイロンヤケイ


 1983年から2009年まで26年間続いたスリランカ内戦の間は閉鎖されていたウィルパットゥ国立公園は、2010年から観光客の受け入れを開始しました。そのためホテルの設備など万全でない点もありますが、まだ訪問者が少なく静かな森で、ゆったりとサファリができる点は大きな魅力となっています。

 また、公園内ではスリランカの建国神話に関わるとされる遺跡も発見されています。シンハラ人の祖:ヴィジャヤ王子の妻であり、インドの『ラーマーヤナ』で登場するランカ島の王:ラーヴァナの子孫とされるヤクシャ族の女王:クヴェニに関する遺跡とされていますが、詳細な研究はされていないようです。


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5.スリランカ初のラムサール条約登録湿地:ブンダラ国立公園


ブンダラ国立公園はスリランカの南端に位置します。現在スリランカには全部で6つのラムサール条約登録湿地が存在しますが、ブンダラ国立公園は1990年に国内で初めてラムサール条約に登録された湿地です。乾燥した気候に対応する棘のある低木林、砂丘、塩田に加え、水深の浅い汽水の潟湖:ラグーンで構成され、このラグーンを求めて多くの野鳥が訪れます。

乾燥地を好むヒメツバメチドリ

湿地帯でツバメチドリを観察


 スリランカに飛来する野鳥のほとんどがブンダラ国立公園にも飛来すると言われており、特に冬季はスリランカ固有種を含む多くの野鳥がブンダラ国立公園を訪れ、バードウォッチングのベストシーズンとなります。希少種や絶滅危惧種も多く飛来し、また公園内では野鳥の保護活動も行われています。


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6.ゾウの野生復帰を目指す:ウダ・ワラウェ国立公園


ウダ・ワラウェ国立公園スリランカ南部内陸の低地に位置し、貯水池の建設時にその集水域確保と、住処を失っていた野生動物の保護のために保護区として設定されました。

ここには野生の定住ゾウが多く生息し、また「Elephant transit home」という野生のゾウの保護施設があることで知られています。「ゾウの孤児院」とも呼ばれ、親とはぐれてしまったり、事故でけがをしたりして保護が必要になった小ゾウを引き取り、育てています。


保護された子ゾウたち



Elephant transit home」の目的はあくまでも保護したゾウを野生の状態へ戻すことであり、そのために施設名称も「ゾウが(野生に帰るための)一時的に滞在する場所」という意味が込められています。

スリランカの象の保護施設というともう一つのピンナウェラ国立公園のものが有名ですが、ピンナウェラでは保護したゾウは寺院やゾウ使いに引き取られていくのに対し、ここウダ・ラワウェでは子ゾウを一時的に保護し、自然に返す取り組みというスタンスで活動しています。ゾウは5歳頃までが赤ん坊、8歳頃までが子供、15歳頃で成体となり生殖可能となりますが、ここではだいたい8歳になるまでの間にゾウを自然へ帰しています。


やがて自然へ帰るゾウが人間に慣れないよう、観光客は少し離れた席から観察します



 この「ゾウの孤児院」に来るゾウの多くはスリランカ内戦で埋設された地雷によって負傷したゾウ、又はその子供です。また子ゾウは非常に高額で取り引きされるため、金銭的利益のために密漁されており、そのために負傷するゾウもあり、親ゾウを密漁で奪われるケースもあります。

ゾウの生息密度の高いスリランカでは、農村の開発に伴い人間とゾウの生活範囲が重なることも多く、農作物を食べられたり、家屋を破壊されたりという軋轢が生じています。ウダ・ラワウェでは人間とゾウの共存できる社会の実現を目指し、地域住民と協力して取り組みを続けています。


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7.「エレファント・ギャザリング」の地:ミンネリヤ国立公園


ミンネリヤ国立公園はスリランカ中央部、世界文化遺産のシギリヤやポロンナルワの近くに位置しています。3世紀にマハセン王によって造営された貯水池を中心に8,885haの保護区が広がり、多くの野鳥が生息しています。

 ミンネリヤ国立公園は69月に150~最大で300頭ものゾウが訪れることで知られています。これは「エレファント・ギャザリング」と呼ばれ、スリランカ中央部が乾季に入り乾燥した結果、南東のワスガムワ国立公園のゾウ達が水場を求めてミンネリヤへ移動するものです。


水辺に集うゾウ

車のすぐそばで観察するチャンスも



 その年の降雨量や各公園の水の量によって時期やゾウの頭数は変化しますが、エレファント・ギャザリングのシーズンであればたくさんのゾウが見られるということで、他の世界遺産に近いことも重なり非常に人気のある国立公園の一つです。

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Text by Okada